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小説(お人形 1~6 ブログトップ

小説 ☆お人形☆ [小説(お人形 1~6]

ひなはお母様よりもお父様のほうが好きです・・・・・だから
夏休みの宿題である作文『家族』を書いている中学3年生のひなは
禁断の扉を開けてしまったのでした。
_________________________________★

  1.
10歳のひなは子供の体で大人の心で
お父様に恋をしてしまいました。
好き以上だから恋だと、ひなは思いました。

とあるネット上で困っているひなを、その人は助けて下さいました。
ちょっとおどけて照れくさげで優しくて、安心して泣いちゃったひなを心配して
その人はメールを下さいました。

ひなは毎日ドキドキしてその人のメールを待つようになりました。
それから数ヶ月の間ひなは幸せでした。

その人がお父様だと知ったのは、間違えて届いた仕事用のアドレスからです。
ひなだけが心を乱したのです。
ひなは玩具を壊すように自分自身を壊しました。

その時から、ひなはお人形になりました。

ひなは、もうすぐ12歳になります。
お父様とお母様とひなは三人で暮らしています。
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  2.
それから三年が過ぎたのに、ひなはまだお人形のままです。
三人は・・・お父様とお母様とひなはミラージュ。

女子校であるひなの学校は唯一ひなの隠れ場所でもありました。
他人であってもお姉様、そのお姉様はひなの手を引いて
校庭の片隅でひなの涙をそっと拭いてくれます。

「お帰りなさい」ドアを開けるお母様、その瞬間がひなは怖いのです。

ある日、ひなはお姉様と映画を観に行って、そして家には帰りませんでした。
お姉様のベッドは、二人をすっぽり包み込むほど広くて、とても良い香りがしました。
震えるひなの髪を小鳥の背を撫でるようにするのですお姉様は。
そうされる事で違う世界にいるひなになれました。

でも、ひなの心の中にはお父様がいます。
何も知らないお父様がいます。
ひなにはお母様の心の中も見えません。

お人形のまま、ひなはもうすぐ15歳になります。
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  3.
ひなは15歳になりました。
お父様は9月から半年間カナダへ出張でした。
お母様と二人きりで過ごす時間は食事の時だけでした。

ひなは自分の部屋でお父様と二人だけの物語を創りました。
それは虹をゲームの世界に架けて、お父様とひな・・・二人だけを
一瞬だけ画面に表示させるのです。
でも、剣とか盾を手にしたひなにはお父様の姿が見えません。
だから、いつもゲームオーバーでした。

学校ではお姉様が、いつもひなの傍にいてくれます。
でも、お姉様の優しさは、ひなの心の影の部分だと思えました。

今日、お父様が帰国しました、夜には家に帰ってきます。
ひなは白い薔薇の花束を買って、花びらを一枚だけお父様の
フィンガーボゥルに浮かべました。
玄関の方から「お帰りなさい」お母様の弾んだ声が聞こえてきました。
「ひな」、お父様はひなの髪を子供の頭を撫でるようにして、
「いい子にしてたかな?」と笑いました。

15歳のひなはまだお人形のままです。
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  4.
ひなは夢の中で、とても重たい物に押しつぶされそうになりながら走っていた。
「助けて・・・」声にならない声を上げているのが自分でも分かった。

「ひな!」お父様の声がした。
お父様がカナダの出張からお帰りになって数日後の朝でした。
「お母様が倒れた! ひなは家で待っていなさい」。
遠ざかる救急車のサイレンの音を聞きながら、ひなはやっと何が起きたのかを理解した。
お昼近くになって携帯が鳴った。
お母様は今夜手術をするのでお父様は病院にお泊りになる。

あれから一ヶ月と一週間が過ぎた。
お母様の意識は戻らず、ひなは毎日病室でお母様の横顔を見つめていた。

病院からの帰りの地下鉄はまるで地獄の中を走り続けているかのように思えた。
本当は青い空も白い雲も無かったのかもしれない、もしあったとしてもひなは
もう見てはいけないのだ。
綺麗な物ばかり見ていたひな、いえ見させて下さっていたお母様。
「それなのに・・・・・」
耐え切れずにひなはまるで子供のように手放しで泣いていた。
「・・・ひなは死にたい」。
 
白いハンカチーフが差し出されているのに気付いたひなは顔を上げた。
優しい眼をしたスーツ姿の男性が立っていた。
「お父様・・・?」。
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  5.
ひなは白いベッドの上で目を覚ました。
白いカーテンが微かに揺れている。
少しだけ開いている白いドアの向こうには白いテーブルが見える。
そっと身を起こしたひなは足音を忍ばせて部屋を出た。
白い薔薇の花の飾られた白い花瓶の下に「今夜はケーキを買ってきますね」
そう書かれた紙片が置かれていて、お父様に似たあの人の姿は無かった。

「いつだったかなぁ?」、ひなはこれと同じ光景を見た事を思い出そうとした。
ひなは白い霧の中を歩いていた、いつかその霧は冷たい雪になってひなを包んだ。
いつの間にかひなは眠っていた。

「早く家に帰らなければ」
薄暗い廊下の向こうの部屋から灯りが漏れている。
ひなはその部屋のドアをそっと開けて中に入った。

大きな姿見の前に飾られた白いウエディングドレスにひなの顔が重なった。
後ろでドアの閉まる音がした。
振り返らなくても、鏡の中にはお父様に似たあの人がひなと並んで立っていた。
あっ! ひなは叫んだ。
「お父様とお母様の結婚式の写真」。

ひなの携帯が鳴った。
「お母様が・・・・・」風が泣いているようなお父様の声。
そう・・・お父様は泣いていた。

地下鉄を降りたひなの手には涙に濡れた白いハンカチーフが握られていた。
「お父様、お母様のために涙を流さないで」。

お人形のまま、ひなは病院のベッドで眠っています。
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  6.
1年後、ひなは両親のお墓参りに行きました。
墓前には白いハンカチーフに包まれた白い薔薇の花束が供えられていました。
ひなは花束を手に取ると白いハンカチーフに火をつけました。

同じ時刻、地下鉄に沿うように流れる川の傍の閑静な住宅街の奥に
古くから建つ洋館が炎に包まれていた。

ひなの机の引き出しの奥には、
お父様に似たあの人の白いハンカチーフが置かれたままです。
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by えありす


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