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小説(涙の雫 1~8 ブログトップ

ファンタジー物語 ☆涙の雫☆ (7) [小説(涙の雫 1~8]

 

           7. ドラゴンの樹

     その頃、パールイ島上空に差し掛かった竜の大群が見たものは穏やかに
    広がる青い海でしかなかった。

    海面を覆った黒い影が去った跡には小さな島が浮かび上がり、そこには大
    きな赤い実をつけた樹が天にも届かんとばかりにそびえ立っていた。

    その実はまるで竜が炎を吐いているようにも見えたため、人々はその樹を
    ドラゴンの樹と呼ぶようになった。その樹の傍らにはまるで真珠を散りばめ
    たように白い花が咲き乱れていた。

    その島は後にパールイ島と名づけられた。

    レオンハルト27歳、アシス10歳、ローレシア5歳の夏のことであった。

    そして終わりなき始まりは愛しき人々の眠る海底へと続いていく。。。by えありす

                The End



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ファンタジー物語 ☆涙の雫☆ (6) [小説(涙の雫 1~8]

 

           6. 別れ

     レオンハルトとアシスが王妃ロクサーヌの部屋で見たものは、全身火傷を負って
    倒れているローレシアの無残な姿だった。
    レオンハルトはローレシアを王妃のベッドに横たえ壁の氷を砕いた。アシスはその
    氷でローレシアの体を冷やしはじめた。
    ローレシアがつぶやいた「レオ・・・早く絵を完成させて・・・」。

     その頃、パールイ島泉の洞窟でエレナは胸騒ぎを覚えていた「もしや・・・」。エレ
    ナはそっとロシニオールの瞼に手を当てた。「ロシニオール様、わたくしはローレシ
    アの様子を見に行ってまいります、すぐに戻りますのでご安心ください」。

      「あぁ、やはり・・・」部屋に入ってきたエレナはみるみるうちに氷像となりローレ
    シアをしっかりと胸に抱いた。ローレシアの火傷は跡形もなく消えていった。しかし
    右手の薬指には炎の指輪ひすいの雫がくっきりと刻まれていた。

    「お母様」「ローレシア」。アシスはふたりの呼び合う声を微かに聞いた。しかしエレ
    ナの姿はなく泉の洞窟で聞いた波の音だけが優しく部屋に響いていた。

    「完成いたしました」レオンハルトは静かに筆を置いた。
    突然まばゆい光があたりにたちこめ王妃ロクサーヌの姿が氷の壁に映し出された。
    「やっと会えましたねアシス・・・。レオンハルトありがとう、このペンダントをアシスの
    胸に」。レオンハルトは三日月のペンダント月影の雫をそっとアシスの胸につけた。
    「きっとアシスを守ってくれるでしょう」。「母上様」アシスは叫んでいた。

    気が付くと王妃の姿は消え三人はお城の尖塔に立っていた。

    レオンハルトの背でアシスとローレシアは涙の虹を見た。
    「レオ・・・」二人はレオンハルトの大きな翼に頬を寄せそっと撫でた。

     パールイ島に着くとレオンハルトはアシスとローレシアを連れ急いで泉の洞窟へと
    向かった。しかし、そこはもう音もなく静まり返っているばかりだった。エレナの姿は
    なく天の竜ロシニオールが真珠の首飾りエルフの雫を胸に永遠の眠りについていた。
    「お父様」ローレシアは声にならない叫びをあげた。

     レオンハルトは、幼いながらも自らの運命のすべてを知った痛々しい二人を前に天
    を仰いで祈った「この者たちに神の光を与えたまえ」。



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ファンタジー物語 ☆涙の雫☆ (5) [小説(涙の雫 1~8]

   
           5.  勇気の証

     「行方知れずと聞いていた天の竜ロシニオール様がこの島に・・・おいたわしや
    ローレシア様」。 

     「明日早朝に出発するとしよう・・・」レオンハルトはアシスとローレシアのまだ幼
    すぎる寝顔を見つめては心を痛めるのであった。
    「アシス様、ローレシア様、お許しください。わたくしレオンハルトは命に代えてもお
    ふたりをお守りいたします」。「王妃様、どうか我ら三人に光を」レオンハルトは 少
    しずつ明け始めた東の空を見上げて祈った。

    「おはようございます」レオンハルトはアシスとローレシアに旅に出ることを告げた。
    「お二人ともご一緒にいらして頂かねばなりません」アシスの顔に一瞬影が差した。
    ローレシアは不安げにアシスに寄り添いながらこの旅の意味を悟っていた。

    レオンハルトは心をこめて朝食のテーブルを飾った。
    無言で食べ終えたアシスとローレシアに、「さて、まいりましょうか」レオンハルトは
    静かに立ち上がった。

     どこまでも青く広がる空と海にレオンハルトの羽の音が力強く響く。「着いた・・・
    今だ」レオンハルトは翼の上のアシスとローレシアに声をかけ、まばゆい光の中水
    を切り裂くように海底へと舞い降りた。

    三人が降り立った場所は氷に固く閉ざされた城門の前であった。
    宝物庫の財宝を狙って力尽きたのであろう竜の屍が鋭い氷の破片となり散らばっ
    ている。どこからか魔物のうなり声が聞こえてきた。宝物を守る竜は羊の皮を身に
    纏い眠ることすらせず命尽きるまで財宝を守り抜くという。

    「さあ、急ぎましょう」。
    不気味な音とともに氷の破片が集まり竜の姿を形作りはじめた。
    硬い氷に閉ざされた城門がびくともせず目の前に立ちはだかり、後ろからは氷の
    竜が迫ってくる。

    「熱い・・・」。ローレシアが身に着けていた人魚エレナから手渡された天の竜ロシ
    ニオールのうろこが赤く光り、あたりの氷が溶け城門は大きく開かれた。炎と化し
    たローレシアの姿が遠のいていく。
    レオンハルトとアシスは溶け始めた氷の道を走りながら叫んでいた「ローレシア様」
    「レーシィ」。



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ファンタジー物語 ☆涙の雫☆ (4) [小説(涙の雫 1~8]

 

         4. 守るべきもの 

    エルフ密刑の始まる一年程前のある嵐の夜、氷壁から身を投げたエルフの少女が
   竜に助けられたと聞く。竜は我が眼をくり抜き清めた水と一緒に少女に飲ませ、我
   がうろこを剥ぎ少女の傷口をふさいだという。
   少女は人魚となりその竜を慕い真珠の眼を捧げた。そして生まれたのがアシスの
   預かった子竜ローレシアである。

   幼いながらも類まれなる能力を持つ子竜ローレシアを怖れた竜たちはローレシアを
   亡き者にせんと機を狙っていた。
   そんな折、戦火に傷ついた天の竜ロシニオールは子竜ローレシアをアシスの腕に抱
   かせ化身の魔法を唱えたのであった。

   人族の姿になった赤い髪の少女ローレシアはレオンハルトの庇護の下アシスと共に
   成長した。
   ローレシアが、天を司る竜ロシニオールを父としロシニオールに助けられエルフから人
   魚へとなったエレナを母として幸せに過ごしたのは生後数ヶ月でしかなかった。

    レオンハルトを前に人魚エレナは話し続けた。
   「竜を鎮めるためには、三日月のペンダント月影の雫、真珠の首飾りエルフの雫、そ
   して竜の炎で作られた指輪ひすいの雫を天にかざして祈らなくてはなりません」。
   「月影の雫はダルタニア王妃の肖像画を完成させればアシス様の胸に輝くでしょう。
   今は氷に覆われ海底深く眠っております。エルフの雫はここパールイ島に奉られてお
   ります。ひすいの雫はローレシア様の勇気の証でございます」。

   エレナの悲しげな吐息が聞こえる。「ここパールイ島にはもうすぐ竜の大群が押し寄せ
   るでしょう。耳を澄ますと聞こえるのです。飛竜の羽ばたきが・・・」。
   「真珠か・・・」レオンハルトは深く息をついた。
   「ローレシアを育てて下さった御恩は一生忘れません」。
   動かぬままのロシニオールの傍らにひざまずきエレナはレオンハルトに手を合わせた。
   「お城の財宝を狙う魔物の数も多数と聞いております。どうかご無事で・・・ロシニオール
   様はわたくしエレナがお守りいたします」。

    その頃、竜の世界では幻の楽園パールイ島を我が物にせんと争いが起きはじめてい
   た。
   天の竜ロシニオールは五年前の傷がまだ癒えぬままの身ながら争いを鎮めようと旅立
   ったのだった。しかしそんなロシニオールを快からず思う竜たちに襲われ傷つき倒れ海
   流に乗せられパールイ島近くを流されているところを人魚エレナに救われたのであった。

    雨の竜、土の竜、風の竜の国は絶望が繰り返される戦への道を歩きはじめていた。



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ファンタジー物語 ☆涙の雫☆ (3) [小説(涙の雫 1~8]

     

            3.  泉の洞窟

     祭壇は泉の前に設えられてある。
    3人は無言で泉を回るように歩いた。七色の輝きの向こうに祭壇の裏側が見え始めると、
   泉の中央を指さして「ここだよ」エルフの少年はふたりを振り返った。
   水しぶきの下のその入り口は、まるで魔物が口を開けているように見えた。いつしか握り
   合っていたローレシアの手がぴくりと動いた。
   「入って見よう」エルフの少年の声に、アシスは「僕がいるから大丈夫だよ」ローレシアに
   囁いた。

    暗い穴の奥には小さな白い光が無数に飛んでいる。その時大きな影が三人を覆った。
   「何をしている」泉の洞窟の番人の声だ。「逃げろ」エルフの少年は叫ぶと洞窟の奥へと
   向かって走り出した。どれ程走ったのだろうか、辿りついたそこは真珠が散りばめられ青
   く澄んだ水とゆらゆら揺れる波が哀しい響きを奏でる場所であった。

   この洞窟にはレオンハルトと王妃の仲を嫉妬したダルタニア国王が下したエルフ密刑によ
   り海底へと沈められたエルフ達が人魚に姿を変え暮らしていたのであった。

    いつしか三人は眠っていた。
   血を流し倒れている大きな竜の傷を人魚がそっと洗っている。竜のうろこがきらきら水に舞
   う。「ローレシア・・・」懐かしい声がする「この竜のうろこをお持ちなさい、いつかきっと役に
   たつでしょう」。目を閉じたままの竜の瞼からひすい色の涙が頬を伝いローレシアたちを包
   んだ。
 
    アシスはローレシアを背に夕暮れの空の下を歩いていた。目を覚ましたローレシアの手
   のひらにはしっかりと竜のうろこが握られていた。「夢ではなかったの?」アシスの背中
   温かい、ローレシアはそっと竜のうろこを耳に当ててみた。

    優しい声が聞こえる。レオンハルトがふたりの前に立っていた「どうなされましたか?」。
   レオンハルトの大きな翼はアシスを守るため、そしてローレシアをも守るためのものでもあ
   ったのだった。

    二人の話を聞くとレオンハルトはローレシアの赤い髪を見つめ腕を組んだ。
   「噂に聞いていた竜と人魚の話は真実であったのか・・・ダルタニア王国脱出の際に出会
   った竜は神と崇められている天の竜ロシニオール様であられたか。ならば命に代えてもロ
   ーレシア様をお守りせねば」。

    レオンハルトはその夜二人が寝静まると泉の洞窟へと急いだ。



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ファンタジー物語 ☆涙の雫☆ (2) [小説(涙の雫 1~8]

             2.  誓いの翼

    「お目覚めですか」レオンハルトはローレシアを抱き上げ、その赤い髪をそっと撫
   でながらアシスを振り返り微笑んだ。
   「今日はエルフの村で精霊祭が行われます。わたくしは少し用事がありますので
   アシス様とローレシアはお祈りにお行きなさい。夕暮れまでにはお迎えにまいりま
   すからね」。二人の小さな後姿が見えなくなるとレオンハルトは空を見上げた。

    「今日こそは・・・」レオンハルトは風切の羽の音を上げ東方に向かって飛び立った。
   ちょうど太陽が真上に昇った一瞬、穏やかな海面に閃光が走った。レオンハルトは
   その光を目指し急降下した。
   「あぁ・・・これは・・・月影の雫」それはダルタニア王妃の胸でいつも静かに輝いてい
   た黄金色をした三日月形のペンダントであった。

   「レオンハルト・・・」どこからともなく王妃の声が聞こえる。
   「ふたりで空を飛びたいと語り明かした夜を覚えておいでですか?国王に問い詰めら
   れた時に祈ったのです。そなただけでも空を飛べるようにと・・・さあ翼を広げてください
   ・・・アシスはそなたの子です」。

   王妃ロクサーヌの肖像画を描くためにエルフであるレオンハルトはお城への出入りを許
   されていた。
   王妃は窓辺の椅子に座り筆を握るレオンハルトに優しく語りかけ、レオンハルトは微笑
   みを返しては時の経つのを忘れ過ごしていたのであった。

    ペンダントの姿は消え失せ波は何事もなかったかのようにレオンハルトの胸に寄せて
   は返していた。「そうだ、未完成のままの肖像画がこの海底に眠っているはず、完成さ
   せれば王妃様もきっと・・・王妃様必ずお迎えに参ります」。
   この場所と太陽が真上にくる時刻とを心に刻むとレオンハルトは低く旋回を繰り返し紫色
   から灰色へと変わり始めた空へと消えていった。

   「アシスよ・・・そなたはやはり我が子であったか・・・」。
   父という言葉の響きに罪の深さを測るレオンハルトであった。そして父と名乗ることを許さ
   じと心に誓いつつも白い翼を広げる王妃と自分の姿を思い描くのであった。
   
    鮮やかな果実や緑の葉で飾られた祭壇の真ん中には涙の形をした真珠の首飾りエル
   フの雫が冷たい輝きを放ち奉られていた。それはエルフ達の哀しみの涙で作られたもの
   であり、精霊祭の日だけ何処からか運ばれ祭壇に奉られるのであった。

   柔らかい草の上に並んでひざまずき小さな掌を合わせアシスとローレシアはお祈りをして
   いた。
   エルフの少年が後ろからふたりに囁いた「秘密の入り口を教えてあげるからついておいで」。



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ファンタジー物語 ☆涙の雫☆ (1) [小説(涙の雫 1~8]


          1.  ひすい色の涙     

   「レオ、熱い!」アシスは焼け狂う炎に囲まれ立ち尽くしていた。
  「アシス様!」レオンハルトの声がした。その時突然目の前が暗くなり大きな竜が
  表われた。「どうか・・・この子を助けてください。必ず迎えに参ります」小さくうなず
  いたアシスの腕にそっと子竜を抱かせると「あぁ・・・ローレシア」竜の眼からひすい
  色の涙がこぼれアシス達を包んだ。

   「アシス様・・・アシス様」レオンハルトの声が聞こえる。眼を開けたアシスの手が
  暖かいものに触れた。横には赤い髪の小さな女の子が眠っている。

  「またあの夢をご覧になられたのですね」レオンハルトはアシスの額の汗を優しく拭
  いながら「アシス様ももう10歳になられます。そろそろ5年前のあの日の事をお話し
  申し上げたほうがよろしいかと・・・」レオンハルトはローレシアの寝息を確かめるとア
  シスの手を引いて海岸へ向かって歩き始めた。

  夜明け前の空にはまだかすかに星屑が散りばめられ少し冷たい風が吹いていた。
  砂浜に座るとアシスを膝に抱き寄せレオンハルトはまるで揺りかごを揺するようにゆっ
  くりと話し始めた。

   アシス様のお国ダルタニア王国はこの島の遥か東方、高い氷壁の上にそびえ立ち、
  すべての強国の侵入をも許さず和平と繁栄を誇っておりました。
  ところが5年前のとある日エルフ狩という密刑が陛下の命により公然と行われるように
  なり、報奨金目当てに人々はエルフを見つけると捕まえては断崖から海へ岩と共に沈
  めるようになりました。
  その行いは神と崇められている天竜様の怒りに触れダルタニア王国は火の海と化した
  のでございます。
  「この子に罪はございませぬ、どうぞこの子を連れて・・・」王妃様はわたくしにまだ幼い
  そなたを託されたのでした。
  傷を負った竜に出会ったのは国を離れる時の事でございます。
  復興もままならぬまま一年後エルフの恨みによりダルタニア王国は海底深く沈められた
  と聞いております。

   奇しくもレオンハルトがアシスとローレシアを背に辿りついたのは密刑を逃れ生き延び
  たエルフの地、人間の目には決して見えない幻の楽園パールイ島であった。
  島の中央にある哀しみの涙の泉を囲むように樹々は生い茂りたわわな果実が色とりどり
  に実り、そのあまりの美しさにレオンハルトは目を見張るばかりだった。

   「レーシィの声がする」アシスがレオンハルトを見上げた。
  「レオ・・・アシス」二人を呼ぶ微かなローレシアの声を夜啼く鳥と風が運んでくる。
  「それではお話しの続きはアシス様がもう少し大人になられた時に致しましょう」。




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ファンタジー物語 ☆涙の雫☆ [小説(涙の雫 1~8]

 
             はじまり

  これは、まだ人々が竜を神と崇め畏れていた時代の物語である。
 ここダルタニア王国では人間とエルフが共存し平穏な暮らしが続いていた。
 しかし、いつの頃からか生きとし生けるものすべての者の心の底に眠る欲望の軸が
 ねじれ始めていたのであった。

 ダルタニア王妃ロクサーヌとエルフの少年レオンハルトの恋が悲劇の始まりであった。
 幼いながら自らの過酷な運命を受け入れ後世の平和を願って、三日月のペンダント
 「月影の雫」、真珠の首飾り「エルフの雫」、炎の指輪「ひすいの雫」を手に入れるため
 戦ったアシス、ローレシア、そして我が欲望を捨てふたりを守り抜いたレオンハルト。 

  それは5年前の夏の初めのことであった。



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