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小説 ☆硝子の翼☆ [小説(硝子の翼)]

      

      硝子の翼

 母の大切にしているガラスケースに入った人形は,
彼の部屋に置かれ、勉強する彼の姿をいつも見つめていた。
そして大人になった彼は、いつしかその事を忘れたつもりでいた。

 ハロウインパーティの会場に入った彼は、光の中に立つ彼女の姿に
引き寄せられるように近づいて行った。
遠い日・・・いつも自分は母に見張られていたような、
あの感覚が彼女の瞳の奥に宿っていた。
彼は彼女の傍に立ち、そっと彼女の手に触れてみた。
温かかった・・・違う・・・彼は、そう思いたかった。

 気が付くと彼は彼女を連れて自分の部屋にいた。
毎晩、彼は彼女をそっと抱いてみた。
彼女はいつも無言で彼の傍で眠った。

 ある夜、彼女が彼に囁いた。
「ここ」彼女は自分のお腹に彼の手を持っていった。

彼はその意味を理解したくなかった。

 あの湖はすり鉢状になっていて、底にもう一つ氷のような水を湛えた湖があり、
身を投じた人は決して見つかることはなく、
死者は永遠に立ったままの姿で揺らめいている・・・・・。

彼はそんな話を聞いた事を思い出していた。
「母さん、ごめんなさい」。


 ケースを磨く母の手からすべり落ちた人形が
ガラスの破片に覆われきらきらと光っていた。

                         by えありす




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